皆様
いつも投稿を御確認いただきまして、ありがとうございます。
今回は最近、相談の多い相続案件の中で、少し気になる相談を連続して受けたため、そのご報告です。
当事務所が顧問を担当させていただいてるお客様が金融機関が開催する相続に関するセミナーに行かれたとのことでしたが、そのセミナーに参加された後、金融機関側から下記の提案を受けたとのことでした。
・相続対策を全くしていないのであれば、すぐに実施すべきである。
・金融機関と遺産整理業務に関する契約を結べば、相続に関する心配はなくなる。
・遺産整理業務の初回手数料は数十万円であり、契約締結後、遺言の作成をサポートする。
・作成した遺言は司法書士を紹介するので、司法書士に報酬を支払って公正証書にすべきである。
・遺言作成後は、毎月数百円で金融機関がその遺言を保管する。
顧問先様は金融機関がサポートしてくれるのであれば、安心できるということで、金融機関と遺産整理業務に関する契約を締結し、公正証書遺言を作成し、金融機関に保管されたとのことでした。
ただその遺産整理業務に関する契約書を拝見しましたが、概ね下記のような内容となっておりました。
・相続発生の連絡について、金融機関が相続人に対して行うが、相続税の申告や相続に関する不動産の登記は税理士や司法書士に別途手数料を払って、実施してもらうこと。
・相続時には相続財産の数%を遺産整理業務報酬として支払うこと。または最低報酬として○○万円支払うこと。
・相続人による遺産分割協議について裁判が発生した場合には、相続人の負担で弁護士に依頼を行い、解決を図ること。
各金融機関によって程度の差はありますが、概ね上記内容でした。
つまり、遺言を保管し、相続発生時には遺言の存在について相続人に伝達することを主たる業務として、それ以外の相続に関する業務は行わない、ということといえます。
当該業務に対して相続財産の数%という高い手数料を請求することとなっており、かなり割高な手数料になっていると思われます。
この件についてインターネットで検索したところ、下記のような記事もありました。
http://diamond.jp/articles/-/63284
また作成された遺言を確認しましたが、遺留分を想定した配分になっていないことから、遺産分割協議で争続になってしまうであろう内容となっておりました。
さらに2次相続を視野に入れると、1次2次の相続で合計税額が最も高くなる資産配分を引き起こす遺言となっておりました。
そこで顧問先様には上記の事実をお伝えいたしましたところ、すぐに金融機関との契約を解除され、ご親族とともに相続について話し合われた結果、遺言を作成しなおすこととなりました。
結果的には親族内で相続に関して、真剣にお話合いをする機会を得ることとなりましたが、契約を維持したまま相続になった場合には、相続人が意図していない多額の手数料を金融機関に払うことになっていたと思います。
すべての遺産整理業務が上記に当てはまるわけではないと思いますが、最近相談された方の多くが上記の内容となっていたため、皆様への注意喚起で投稿させていただきました。
金融機関と遺産整理業務について契約を締結される場合には、業務の内容とその対価について、十分な検討をされることをお勧めいたします。
税理士 松石滋樹